投稿論文 Vol.15–17

嫌気性LCFA分解微生物群集添加による油脂のメタン発酵の効率化

松本悠暉、馮夢佳、福田康弘、中井裕、多田千佳
東北大学大学院農学研究科 989-6711 宮城県大崎市鳴子温泉蓬田232-3

要約
油脂のメタン発酵の効率を高めるために、嫌気性長鎖脂肪酸分解微生物群集の馴養を行い、オレイン酸分解によるメタンガス化の効果を確認した。長鎖脂肪酸分解に寄与するSyntrophomonas属と古細菌が多く存在する長鎖脂肪酸分解微生物群集(LDMC)を作製でき、本LDMC添加による牛脂のメタン発酵では、LDMC無添加のメタン発酵に比較して高い収率、且つ、3倍速い速度でのメタンガス化が可能となった。さらに、本LDMC添加型メタン発酵を、食肉処理場の従来法である好気活性汚泥処理の前段に導入することについて試算した結果、年間の排水処理にかかる消費電力の99.6%が削減でき、それに伴うCO2排出量も年間494.4トンの削減が可能であることが示された。

キーワード: 嫌気性分解,長鎖脂肪酸(LCFA)、牛脂、LCFA分解性微生物群集、メタン生産

受領日: 13.02.2018. 受理日: 20.04.2018.
日本畜産環境学会誌 No17 (1) pp46-57. 2018
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Monitoring of pathogenic microorganisms originating from nomadic livestock feces in the Tuul River basin of Mongolia

Chika Tada, Tomoe Kotogaoka, Moe Takada, Yasuhiro Fukuda, Yutaka Nakai
Graduate school of Agricultural Science, Tohoku University, 232-3, Yomogida, Naruko-onsen, Oosaki, Miyagi, 989-6711

Abstract
In Mongolia, livestock concentration is occurring in places from which drinking water is obtained along with overgrazing, and there is concern over contamination of river water by nomadic livestock feces. In this study, we investigated the pathogenic microorganisms (E. coli, Cryptosporidium, Giardia) originating from the feces of nomadic livestock (horse, sheep, goat, cattle) and river water on the Tuul River from 2012 to 2014. A comparison with past reports suggests that nomads in Mongolia tended to test positive at a higher rate for pathogenic microorganisms than in domestic livestock in other countries. These results indicate the need to consider new nomadic ways that can prevent river water pollution due to the feces derived from nomadic livestock in order to preserve a healthy water environment.

Keywords: nomadic livestock, feces, river water, E.coli, Cryptosporidium, Giardia

Receipt of Ms: 27.09.2017. Accepted: 15.11.2017.
Journal of Animal Production Environment Science No17 (1) pp36-45. 2018
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界面活性剤をコーティングした粉末硫黄と炭酸カルシウム粒からなる新規脱窒用粉末資材と土木用市販ノッチタンクによる養豚排水の硫黄脱窒実証試験

長谷川輝明1、田中康男2、笠原和久3、長田隆4
1)千葉県畜産総合研究センター、千葉県八街市 289-1113
2)一般財団法人畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所、福島県西白河郡 961-8061
3)加藤産商株式会社、東京都中央区 103-8228
4)国立研究開発法人農研機構畜産研究部門、茨城県つくば市 305-0901

要約
養豚排水の高性能脱窒処理を検討するため、簡易構造の実規模リアクターと硫黄脱窒用 に開発した粉末資材を利用して約1年間の実証試験を行った。資材は、粉末硫黄をベースに炭酸カルシウムと界面活性剤を配合して作製した。また、リアクターには、土砂沈殿分離用として内部が3つに分画されている市販のノッチタンクを用いた。養豚活性汚泥処理施設の後段に2m3 容量のリアクターを設置し、資材を500 kg充填した。活性汚泥処理水を原水としてリアクターに連続流入させ、資材層を通過後に流出させた。資材見かけ容積(投入時点)あたりの水理学的滞留時間は0.3~1.5日、資材単位重量当たりの窒素負荷量は0.2~1.2kg/ton-資材・日で試験を行った。リアクター内の水温は5.5 ~30.6°Cの範囲で推移した。なお、窒素除去率を上げるためリアクターの改良を行いながら試験を進め、(1)基本構造リアクター(SPEC-1)、(2)逆洗機能付加リアクター(SPEC-2)、(3)塩ビ筒付加 リアクター(SPEC-3)の3タイプのリアクターを試作した。このうち、SPEC-3での窒素除去率が最も高く、原水硝酸態窒素の平均244.6mg/Lに対し、処理水硝酸態窒素は平均88.5mg/Lで、その平均除去率は64.6%であった。また、窒素負荷量、水温、および資材層の損失水頭が除去率に影響することが推測され、これら3因子の条件が適当な場合は水温 5~10°Cでも90%以上の良好な除去率が得られたことから、加温無しで通年処理できる可能性が示唆された。

キーワード: 脱窒作用,粉末硫黄、硫黄脱窒作用、養豚排水

受領日:12.09.2017. 受理日:20.10.2017.
日本畜産環境学会誌 No17 (1) pp26-35. 2018
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牛ふん堆肥発酵熱を回収・再利用した高温発酵堆肥化技術の開発

福島博、布野秀忠、安田康明
島根県畜産技術センター, 島根県出雲市, 693-0031

要約
高温での堆肥化を目的とし、堆肥発酵槽の床と壁に蓄積された発酵熱を回収・再利用するブロワ入気加温システムを作製して堆肥化促進効果を観察した。本システムでは発酵槽後方の壁面に密閉構造のブロワ収納スペースを配置し、壁面ダクトで加温された外気をその壁面に装着したラジエターを通し吸引すると同時に、床に埋設された架橋ポリエチレンパイプ内で40~50℃に加温された温水をラジエターに循環することにより30~50℃の温風を得て、これを通気管に送風した。ブロワ運転条件として第1槽での風量70ℓ/m3/分で1週間、第2槽での風量50ℓ/m3/分で3週間の強制間欠通気運転(15分運転45分停止)をすることにより外気温の変動に影響されることなく堆積層全体で70~80℃の高温発酵を長期間誘導することができた。このことにより、乾物の分解促進や水分の蒸発、堆肥の減容化はもとより病原菌などが死滅したクリーンな堆肥を安定的に製造することができた。

キーワード: 牛ふん堆肥,高温発酵堆肥、発酵熱利用

受領日: 21.03.2017. 受理日: 24.04.2017.
日本畜産環境学会誌 No16 (1) pp61-72. 2017
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食用油または尿素を添加した豚糞の堆肥化過程における臭気および温室効果ガス発生特性

古屋元宏1,長田 隆2,荻野暁史2,清水景子1*,福沢昭文1*
1)山梨県畜産試験場,山梨県中央市,409-3812
2)国立研究開発法人農研機構畜産研究部門,茨城県つくば市,305-0901
*現所属 山梨県西部家畜保健衛生所,山梨県韮崎市,407-0024

要約
食用油または尿素を添加した豚糞堆積混合物の堆肥化過程における臭気および温室効果ガスについて、温暖期および寒冷期における発生量を精密に測定した。堆肥化には豚糞とオガクズを混合し含水率70%としたものを初発堆積原料に用いた。実験区分は食用油(なたね、大豆)を原料重量比約4%添加した食用油添加区(C/N比13.0~14.4)と、尿の混入を想定し尿素を約4%添加した尿素添加区(C/N比5.0~9.8)の2区分とした。各区1.5t(約3m3)規模で堆積切り返し方式による堆肥化を行った。堆積混合物を定量換気チャンバー(幅3.0m×奥行3.0m×高2.2m)で被覆し、チャンバー上部からのブロワーによる定量換気(約51m3/h)の排気中の臭気および温室効果ガスを堆肥化初発から11週間測定した。また、週毎に切返し、採取した試料の性状、細菌数等を分析した。結果として、各区のアンモニアと臭気指数は温暖期・寒冷期とも初発~4週目に盛んに発生したが、尿素添加区に比べ食用油添加区の方が全期間を通じて低く推移した。一酸化二窒素については、温暖期は両区とも大差なく微量であったが、寒冷期は食用油添加区に明瞭な発生ピークが見られた。これは発酵温度等微生物の活動環境の違いを反映したものと示唆された。以上から、豚糞堆肥化原料に食用油あるいは尿素を添加するとアンモニアと臭気指数は食用油添加区の方が尿素添加区より低く、また食用油添加区においては通常寒冷期に発生が少ないとされる一酸化二窒素の発生が確認された。

キーワード: 食用油、温室効果ガス、アンモニア、豚排せつ物堆肥、尿素

受領日: 10.10.2016. 受理日: 23.02.2017.
日本畜産環境学会誌 No16 (1) pp50-60. 2017
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搾乳関連排水の低コスト管理に関する検討 -越流式沈殿槽による汚濁負荷流出の低減-

猫本健司1,河合紗織2,干場信司, 内田泰三3,森田茂1
1)酪農学園大学農食環境学群 北海道江別市 069-8501
2)酪農学園大学大学院酪農学研究科 北海道江別市 069-8501
  現:青森県産業技術センター畜産研究所 青森県上北郡野辺地町 039-3156
3)九州産業大学工学部, 福岡県福岡市, 813-8503

要約
搾乳関連排水を対象とした既往の浄化施設は、コストの高さから中小規模の酪農場には普及が進んでいない。普及が容易で低コストな管理技術として、北海道のH町の酪農場約150戸で導入された越流式沈殿槽における、浄化性能や使用条件ならびに流出抑制効果を検討した。38戸における排水量や沈殿槽の滞留日数、廃棄乳混入の有無などを調査するとともに、沈殿槽内の表層水を採取して成分分析を行った。廃棄乳が混入しているなどの理由から排水中の生乳混入の割合が0.5%以上の事例では排水基準を満たすことができなかった。一方、廃棄乳を一切混ぜない場合では、約8割の事例ですべての排水基準がクリアできていた。残り約2割で排水基準を上回った原因は、ミルクライン内の残乳の回収が不十分であるためと推察された。越流式沈殿槽を用いて低コストに搾乳関連排水を管理するには、滞留日数5日以上とし、ふん尿や廃棄乳は混入させず、さらにミルクライン内の残乳を十分に回収して用いることが使用条件であると判断された。越流式沈殿槽によるT-Nの除去率は16-63%(滞留日数4日以上の場合)、T-Pの除去率は8-37%(同)であり、決して高い数値ではない。しかし、多少性能が劣っていたとしても、低コストで普及させやすい管理施設を多くの戸数に導入することで、地域全体で流出する汚濁負荷は抑制される。

キーワード: 搾乳排水、沈殿槽、浄化、廃棄乳、酪農場

受領日: 29.08.2016. 受理日: 02.10.2016.
日本畜産環境学会誌 No16 (1) pp42-49. 2017
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プラットフォーム洗浄排水と前すすぎ排水の分離による搾乳関連排水の処理負荷低減

河合紗織1・猫本健司2・干場信司・森田茂2
1)酪農学園大学大学院酪農学研究科 北海道江別市 069-8501
  現:青森県産業技術センター畜産研究所 青森県上北郡野辺地町 039-3156
2)酪農学園大学農食環境学群 北海道江別市 069-8501

要約
搾乳関連排水の処理負荷低減により浄化施設の設計規模を縮小する一手法として、ふん尿が混じるパーラーのプラットフォーム洗浄排水と、ミルクラインに残る生乳が混じる前すすぎ排水を搾乳関連排水に混ぜずに分離して、同排水の汚濁度合を下げる手法を検討した。A~O酪農場における、プラットフォームの洗浄に用いる水量は、25~40Aのホースを用いて水道圧で行う場合は1,300±750[L/日](n=11)であったが、高圧洗浄機を用いる場合は200±76[L/日](n=4)と比較的少ないため、貯留して畑へ施用することが可能であると示唆された。また、P酪農場のミルクライン排水の配管に自動制御の電磁バルブを設置して、前すすぎ排水(116[L/日])を分離して尿溜に貯留させたところ、同農場の搾乳関連排水のBODは分離前の320mg/Lから170mg/Lに低下した。上記の検討をふまえ、プラットフォーム洗浄排水と前すすぎ排水を搾乳関連排水に混ぜずに分離して貯留できるパーラー排水システムを提案し、Q酪農場に導入された。同農場における搾乳関連排水のBODは180mg/L、CODは47mg/Lであり、一般的な搾乳関連排水に比べて汚濁度合は低く、処理負荷が低減された。

キーワード: 搾乳排水、プラットフォーム、前すすぎ、浄化、酪農場

受領日: 29.08.2016. 受理日: 29.09.2016.
日本畜産環境学会誌 No16 (1) pp34-41. 2017
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製本工場由来廃紙粉による畜舎排水中硝酸性窒素の除去

田中康男・小堤悠平・畠中哲哉・道宗直昭
(一財)畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所、福島県西白河郡 961-8061

要約
畜舎排水の硝酸性窒素除去を目的として、製本工場から排出される製本廃紙粉を脱窒の電子供与体に利用する可能性を室内実験で検討した。有効容量48Lの円筒形リアクターの液相上部に複数のネットに封入した紙粉を浸漬し、硝酸ナトリウムを添加してNO3-‐N濃度を200~300mg/Lに高めた乳牛舎汚水浄化処理水をぺリスタポンプで連続的に流入させた。水温は20℃に制御した。単位紙乾重あたりNO3-‐N負荷率1~2kg-N/ton・dayにおいて通水開始後約50日で最高80%の除去率が得られた。除去率はその後徐々に低下したが、100日目に新たな紙粉120gを追加浸漬すると再び除去率は上昇した。これらの結果より、紙粉を電子供与体とした脱窒が可能であることが確認された。

キーワード: 養豚、廃水、脱窒、廃紙粉

受領日: 15.07.2016. 受理日: 30.08.2016.
日本畜産環境学会誌 No16 (1) pp27-33. 2017
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養豚排水の硫黄脱窒処理に利用する高性能資材の開発

長谷川輝明1)・笠原和久2)・田中康男3)
1)千葉県畜産総合研究センター、千葉県八街市 289-1113
2)加藤産商株式会社、東京都中央区 103-8228
3)一般財団法人畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所、福島県西白河郡 961-8061

要約
簡易に利用可能で高性能な硫黄脱窒用資材として、粉末硫黄に界面活性剤と炭酸カルシウムを配合した新たな資材の開発を行った。資材の性能試験用脱窒リアクターには液部有効容積2.23Lの円筒型プラスチックカラムを用いた。このリアクターに開発した資材を1kg投入したところ、資材は速やかに液中を沈降した。養豚汚水の活性汚泥処理水(硝酸性窒素濃度の平均207.7mg/L)を原水としてリアクターに連続的に流入させたところ、試験開始19日目に水質汚濁防止法の一般基準値である100mg/L以下まで低減し、23日目~48日目は処理水にほとんど硝酸性窒素は検出されなかった。窒素負荷量0.57kg-N/ton-資材・日以下の条件で硝酸性窒素の十分な除去が可能であることが示された。

キーワード: 独立栄養細菌、脱窒処理、単体硫黄、硫黄脱窒処理、養豚排水

受領.: 25.02.2016. 受理: 04.04.2016.
日本畜産環境学会 No15 (1) pp44-50. 2016
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Effects of Dietary Soybean Hull Supplementation to Fattening Pigs on the Growth Performance and Ammonia Gas Emission from the Excreta

Seizi Sukemori and Shuhei Ikeda
Tokyo University of Agriculture, Department of Agriculture
Funako 1737, Atsugi-shi, Kanagawa Prefecture, 243-0034, Japan

Abstract
The present study aimed to evaluate the effects of dietary soybean hull supplementation on the growth performance and ammonia gas emission from excreta of fattening pigs. Six crossbreed (M×Y×B) fattening pigs were assigned to two dietary treatments, as control (no soybean hulls added) and experiment (10% soybean hulls added) groups. There was no significant difference in the results of growth performance and chemical contents of urine and feces. Ammonia gas emission in both groups showed an approximate linear increase and there was no significant difference between two groups. In conclusion, it can be suggested that soybean hulls are a valuable feed source and that they have no negative effect on the growth performance and ammonia gas emission in the 10% dietary supplementation.

Key words: soybean hull, feed source, pig, fattening, ammonia gas emission.

Receipt of Ms.: 14.12.2015. Accepted: 22.12.2015.
Journal of Animal Production Environment Science No15(1):pp38-43. 2016
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籾酢液の抗菌性要因と飼料変敗対策についての検討

二井 博美1・節句田 恵美2・本間 満3
1) 雪印種苗株式会社 東京技術推進室 千葉県千葉市美浜区、238-0002
2) 岡山情報ビジネス学院 岡山県岡山市、700-0024
3) 雪印種苗株式会社 技術研究所 北海道江別市西野幌、069-0832

要約
米の生産に伴い発生する副産物である籾殻を燻炭化する際に生成する籾酢液の抗菌性について検討した。籾酢液は、木酢液・竹酢液同様に、pHは3.0以下と低く、水酸化ナトリウムによりpHを6.5に調整すると、抗菌活性は大きく低下した。また、籾酢液・木酢液・竹酢液の抗菌活性は、エバポレーションにより大きく低下することから、揮発性の成分が主たる抗菌成分であることがわかり、またそれは、酢酸・プロピオン酸であることが推察された。 不揮発性の抗菌画分を固相抽出(ステップワイズ溶出)で分画したが、Sep-Pak tC18から40%濃度のメタノールで溶出される画分に弱いながらも活性が認められた。またTMR飼料への添加試験では、籾酢液(RBとRSH250)において試料中の総細菌数を低下させた。 これらの結果から、籾酢液の抗菌活性の主体は揮発性成分であるが、不揮発性画分にも抗菌活性物質が含まれることが分かった。籾酢液の畜産現場への利用が期待される。

キーワード: 籾酢液、抗菌活性、揮発性成分、不揮発性成分

受領.: 15.06.2015. 受理: 02.09.2015.
日本畜産環境学会 No15 (1) pp27-37. 2016
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